最近、後輩が作成したメールを確認していて、
「これは少し直した方がいいな」
と思うことがありました。
メールの内容自体に問題があるわけではありません。
伝えたいことも分かりますし、仕事に必要な情報もきちんと書かれています。
ただ、宛名や敬称など、いわゆるビジネスマナーの部分に少し気になるところがありました。
社会人をある程度経験した人なら、
「そこは普通こう書くのでは?」
と感じるような部分です。
僕も最初に見たときは、正直、
「えっ、そこを知らないの?」
と思いました。
しかし、少し考えてから別のことに気づきました。
知らない本人が悪いというより、誰かが教えなければ分からないことなのではないか。
その後輩は、仕事ができないわけではない
その後輩は、人との接し方がとても上手です。
電話応対は丁寧ですし、相手の話もきちんと聞けます。
仕事をお願いしたときも、説明すれば理解が早く、しっかり対応してくれます。
決して「社会人として常識がない」という人ではありません。
おそらく単純に、
ビジネスメールの細かいルールを、これまで誰にも教わってこなかった
だけなのだと思います。
考えてみると、ビジネスマナーというのは不思議です。
新入社員研修などで基本的なことは習いますが、
「役職者への宛名はどう書くのか」
「社内と社外で敬称をどう使い分けるのか」
「どのような場合に上司をCCへ入れるのか」
といった細かい部分は、実際に仕事をしながら覚えていくことが多いと思います。
職場ごとの慣習もあるため、絶対に一つの正解があるとも限りません。
結局、近くに教えてくれる人がいるかどうかで、身につく知識には大きな差が出るのではないでしょうか。
「普通はこうする」では伝わらない
仕事をしていると、
「そんなの社会人なら常識でしょ」
という言葉を耳にすることがあります。
しかし最近、僕はこの言葉を少し危ないと感じるようになりました。
その人にとっては当たり前でも、別の職場では当たり前ではないかもしれません。
そもそも、誰からも教えてもらっていない可能性もあります。
教わっていないことを知らないのは、ある意味当然です。
それなのに「普通はこうする」とだけ言われても、本人にはその“普通”が分かりません。
例えば、
「この場合は『様』を使った方がいい」
と答えだけを伝えれば、そのメールは直せます。
しかし、なぜその表記にするのかが分からなければ、少し違う場面でまた迷ってしまいます。
一方で、
「役職名自体を敬称として扱う場合はこうする」
「社内と社外では考え方が異なる」
といった理由まで理解できれば、別の場面でも自分で判断できるようになります。
だから最近は、後輩に何かを伝えるとき、
「それは違うよ」だけで終わらせないようにしたい
と思っています。
注意するより、理由を説明した方が早い
もちろん、毎回長々と説明する必要はありません。
「この書き方にした方がいいよ。理由はこうだから」
と一言添えるだけでも十分です。
その方が本人も納得しやすく、一度理解すれば次から自分で判断できます。
反対に、
「普通はそうだから」
「昔からそうなっているから」
とだけ言われても、ただ形を暗記することになります。
僕自身、意味の分からないルールをそのまま覚えるのは苦手です。
だからこそ、後輩にもできるだけ、
「何を直すのか」だけでなく、「なぜ直すのか」まで伝えたい。
その方が、注意する側にとっても、注意される側にとっても有意義だと思います。
気づけば、自分が教える側になっていた
ここまで考えて、もう一つ気づいたことがあります。
僕もいつの間にか、後輩のメールを確認する側になっていました。
社会人になったばかりの頃は、僕のメールを先輩が直してくれていました。
「この表現では少し強く聞こえる」
「この人には先に報告した方がいい」
「このメールには、この人もCCに入れておこう」
当時は、
「細かいな」
と思ったこともあります。
それでも、今になって振り返ると、あのとき指摘してもらったからこそ身についたことがたくさんあります。
先輩たちも、単に文章を直していたのではありません。
僕が知らないことで損をしないように、仕事の進め方を教えてくれていたのだと思います。
そう考えると、今度は自分が教わったことを後輩へ返す番なのかもしれません。
知らないだけで損をするのは、もったいない
僕は、ビジネスマナーを完璧に守ることが、仕事で一番大切だとは思っていません。
メールの宛名を多少間違えても、仕事そのものが素晴らしい人はたくさんいます。
反対に、文章だけが丁寧でも、肝心の仕事が進まなければ意味がありません。
それでも、
知らないというだけで、相手に悪い印象を持たれてしまう
のは、やはりもったいないと思います。
本人に悪気はない。
普段の仕事もきちんとしている。
それなのに、メールの書き方一つで、
「この人は少し常識がないのかな」
と思われてしまうことがあります。
それなら、知っている人が一言教えればいい。
間違いを責めるより、次から困らないように理由を伝えた方がいい。
最近はそう思うようになりました。
自分もまだ、知らないことだらけ
もちろん、僕自身がビジネスマナーを完璧に理解しているわけではありません。
今でも、
「この書き方で本当に合っているのかな」
と思って調べることがあります。
以前教わったルールが、今の働き方や職場では合わなくなっていることもあります。
そのため、
「自分が正解を教えてやる」
という立場にはなりたくありません。
分からなければ一緒に調べる。
自分が知っていることなら、理由も含めて伝える。
それくらいの距離感でいいと思っています。
社会人の「当たり前」は、最初から誰もが知っているものではありません。
自分が先輩から教えてもらったことを、今度は後輩へ渡していく。
そして、その後輩がいつか、さらに下の世代へ伝えていく。
そうやって、職場の知識や気遣いは受け継がれていくのかもしれません。
後輩のメールを見ながら、
「ここを直しておいてね」
と伝えようとして、ふと思いました。
注意する側になったということは、自分もそれなりに長く社会人をやってきたということなんだな。
少しうれしいような、少し複雑なような。
そんな気持ちになった出来事でした。


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